『トンネルを抜けると、そこは・・・・・・・。』
かたや漬物、かたや揚げ出しになっていたかもしれなかった胡瓜と茄子に足が生え、白いレースのステッチのある敷布の草原に立ってあちらの様子を伺っているのは愉快だ。
祖父母の実家はトンネルの向こうの山国にある。
山、川の他はなあんにもない。
親戚まわりをしてみれば、この暑いのにどの家にもクーラーがない。
然れども大きく開けた木の窓から滑り込んでくる風が頬を掠めれば盛暑も和らぐ心地がする。ふしぎ。
おうちに帰ったらソローを読まないといけない。
山のふしぎ。
「あらみわちゃん、すっかり都会のお嬢さんになっちゃって。」
おおおばちゃんの何気ない一言に、寂しさを感じたのは何故だろう。
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